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俺に向けられた言葉も、聞いてるこっちが力の抜けるような声だ。
彼はルームメイトのナル。
今年の三月、高校を卒業し、地元を離れてこの寮に越してきた。
今は、この近くにある、結構偏差値の高い大学に通っている。
料理は上手いし、性格もいいし、普段はしっかりしてるんだけど、とにかく寝起きが悪い。本当に悪い。
どのくらい悪いかというと、最近買い換えたばかりで、とても大切にしていたはずの新型アイポッドを、目覚まし時計と勘違いして自分で大破損させてしまうくらい悪い。とにかく見境がなくなるのだ。
普段はもっとずっと遅い時間に起きてくるのに、こんなに早起きをするだなんて、そうそうありえることじゃない。
イリオモテヤマナコとか、そういう絶滅危惧種並みの頻出度だ。
そういえば一昨日、入学してから半年も経たないと言うのに早くも「一限の講義の出席がやばい」と言って嘆いてたが、その危機感のおかげで睡魔に打ち勝ったのかも。
「どしたの、こんな朝早くに起きて。今日一限?」
「ううん。三限」
ナルは心底眠そうな大あくびをかきながら答える。
俺の予想は外れたみたいだ。
なら、早起きの理由はおおよそ検討がつく。腹が減ったとかそんな理由だろう。
「なんかすごいお腹すいて、急に起きなきゃー…って」
やっぱり。
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