宵越しの君に

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   ひどく荒んだ神社で、鳥居は朱色がぬけ落ちて茶色く変色しているし、外から見ただけでも管理の杜撰さがよくわかる。  境内は手入れがされていないのか雑草が伸び放題、社や手水所は長い草に囲まれている。  社の木製の壁は、今にも崩れそうなくらいボロボロ。  夜中にでも来てみたら、よからぬ何かが出てきそうなこの廃れた小さな社は、俺のジョギングの折り返し地点でもある。  人によっては、不気味だと思うこの場所だけど、俺は不思議と、ここに恐怖心は抱かない。  むしろ、とても綺麗だと感じる。  穏やかで青々とした木々の隙間から、木漏れ日が差す瞬間を見上げると、澄んだ空気が光を透かして本当に綺麗なんだ。  俺は別にナチュラリストってわけでもないし、むしろ携帯電話とか、音楽プレイヤーとかがないと生きていけない根っからの現代っ子だけど、ここは、俺にとってどこよりも好きな場所だ。  そして、大切な場所だ。
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