第1章

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一基が笑いながら言う 「笑い事じゃねえよ、今日なんか二十人位連れてきやがったんだぜ、あのリーゼント」 「またそれは、大人数で。それにしても、いつも傷一つ負わずによく帰ってくるもんだぜ」  少し呆れ気味に一基がそう言うと 「まあ、あの程度は、何とか」  俺がそう言うと 「よく言うぜ、武器あり二十人の不良相手に無傷で逃亡なんて、普通できるもんじゃねーよ」 「そんなことねーって。あんなのは素人の 集まりと大して変わんねぇ―よ」 「そんなことを簡単に言ってのけられる時点で、すげーよ」  俺と一基が話をしていると担任が教室に入ってきて 「これから、朝のHR始めるから静かにしろ」  担任であるこの教師、朝倉 誠(あさくら まこと)という 二十代後半で、身長は高く、見るからに鍛えていることが分かるほど筋肉が付いている 担当教科は保健体育と他にいくつか教科の担任をしている 趣味は筋力強化とフルマラソン、トライアスロンなどである  朝倉先生の一言で静かになる 理由は簡単、あの教師に逆らうことが何を意味するか皆理解しているからである  静かになったことを確認した朝倉先生は、出席を取り連絡事項をいくつか言うと 「HR終わり、チャイムが鳴るまで自由にしていていいぞ」  朝倉先生は、早めにHRを終わらせてくれる先生で、残りの時間は自由にさせてくれる先生なのだ  ちなみに、さっき言ったこの先生に逆らうと残りの時間中、ずっと一人だけ小テストをさせられる、遅刻も同様  しかし、逆らったり遅れたりしなければいいので、人気の高い先生の一人となっている  他の皆が、雑談や勉強している中 俺は、机に伏せていた 「どうした、款」  一基が、覗き込んでくる 「いや、ちょっと考えごとをしていてな」 俺は、顔を起こす 「考えごと?あのリーゼントの事か」 「いや、それ以外の事」 「じゃあなんだ。あいつら以外の事で悩むことなんかあるのかよ」 「じゃあ聞いてくれるか」
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