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ロシア軍基地、エントランスホール。
そこは今、物々しい雰囲気に包まれていた。
静寂が支配しているが、熱気がムンムンとあふれている。
「各員、射撃態勢をとれ。」
凛とした声で小隊長、ボルフスキーは命令した。全員の武器のセーフティが外される。
(どうなっているのだ?)
モニタールームから侵入者がいるとの報告。そしてここが最初の防衛ラインとなった。広いホールのソファや机、受付を盾に十人、そこから伸びる一本の通路に十人、完全武装した兵士がいる。 侵入者についてわかっていることは、警備兵二人を殺し、ジャケットを着込み、スポーツバックを持っていること。ただそれだけ。
「全員警戒せよ。」
不安を押し隠し、命令する。小隊長としては、部下を不安がらせてはならない。どんな状況においても。
(ん?)
ボルフスキーは、表に人の気配を感じた。この状況で外を歩く人間は、ただ一人。
「全員、俺の合図とともに撃て。」
そう命令して、押し黙る。
静寂を切り裂き、遠くから足音が近づく。それはおそらく、ゲートの隊員も聞いていたであろう音。隊員に緊張が走る。
(どう出てくる・・・。)
寒冷地のため重く重厚にできた扉の前で、足音は止まった。そしてゆっくりと扉が開く。
(人影が見えたら・・・)
合図を出す準備をしていたボルフスキーの目に映ったのは、開いた扉の隙間から放り投げられた円筒形の物体だった。
「?!」
そしてその物体、スタングレネードは爆発した。
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