序章 ビギニング・カタストロフィー

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 そんな中で声を発した白髪の老人に答える黒髪の若者。白髪の老人は、その風貌とは異なり、目には強い光をたたえている。 「はい。潜入していた諜報員による報告です。」 「いや、だからだね・・・」  白髪の老人は諭すかのように話をさえぎる。 「その諜報員が信用に値する人間なのかと聞いておるんじゃよ。」 「その点は心配要りませんよ。」  茶髪の若者が先を続ける。はっきり言ってこの場には似つかわしくない風貌だ。 「彼は長年務め、功績も上げている。そして・・・」  そこで若者は自分のせりふが劇的な効果を上げるように一拍おいた。 「この情報が届いた直後、連絡が途絶えました。」   諜報員の世界で連絡が途切れることは、死を意味する。 「わかった。そやつが信用に値することは重々わかった。しかし本当なのかね?」  またはじめの質問に戻る。若者は面倒くさげな顔をするが、 「本当ですよ。うそ偽りなくね。」  答えたのは、長身の中年男性だった。スーツで隠しているようだが、そのたくましい体つきは隠せそうにないようだ。
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