序章 ビギニング・カタストロフィー

1/24
745人が本棚に入れています
本棚に追加
/628ページ

序章 ビギニング・カタストロフィー

 二〇〇七年、冬。世界は平和に見えた。人々は日々の生活に追われ、新聞を配達し、牛乳を運び、レジを打ち、患者を診ていた。  だが世界は平和ではなかった。さまざまなテロ組織の活動、大国間の緊張、民衆の不満。それぞれが複雑に絡み合い、混沌とした状況を作り出していた。  ロシア。周りを山に囲まれた小さな都市。その郊外にひとつの基地があった。といってもこれは旧基地で、別にちゃんとした基地は存在する。昔建設された非常用の基地なのでかなり小さく、兵士も必要最低限しかいない。小さな町の基地なので、暇そうに見える。そう、見える。  だが裏では、かなりあわただしい状況となっていた。   「それは本当なのかね?」    薄暗い会議室。楕円形に連ねられた机にはいかめしい面々がそろい、中央にはプロジェクターがセットされていた。ただ、下ろされたスクリーンには何も映っていなかった。薄暗いのは、カーテンが下ろされているためだ。分厚いカーテンのため、外の様子がうかがい知れない。申し訳なさげに明かりはついている。そんな中で一様にスーツを着込んだ男たちがいかめしく座っているこの光景は、ある意味恐ろしい。
/628ページ

最初のコメントを投稿しよう!