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ホットエリア 奴等の巣
「シド、準備出来てる?」
迷彩柄の衣装に着替えて来たネヴァはヘルメットの顎紐を握り、足を投げ出して座り込んだ自分の一号車に走り込みながら声を張上げた。
この服は白兵戦車専用の戦闘服だ。
肘と膝、そして胸から腹に掛けて防弾、防刃繊維の増加装甲が編み込まれていて、重量がある。
ちなみにこれはリザードマンからの攻撃に耐える為、というよりは機体が損傷した際に破片や飛来物による致命傷を受けにくくする為という意味合いが強い。
リザードマンの強靭な顎と鋭い爪に対する耐性は全く持っていないため、奴らとの戦闘においては気休めにすらならない代物だった。
「ああ、バッチリだ。火は入ってる、早いところ動作確認を終わらせてくれ。それから、武装はいつも通りで良いな?」
一号車の開け放たれたコクピットに飛び込んだネヴァは素早くヘルメットをかぶり顎紐を締める。
「さすがシド。分かってるね」
「持ち上げたところで何も出ん」
頭から耳の周りまでを覆う角張ったヘルメットには目を保護する為のシールドと、口元に引き出し式の小型マイクが着いている。
このシールドは作戦内容によって交換可能だが、今回は透明な強化樹脂による防弾レンズを使用している。
もっとも、顔面に銃弾を受けた日には、顔や目よりも先に首がオシャカになるだろうが。
ナオとルリカもネヴァと同じ出で立ちでそれぞれ三号車と二号車に乗り込んだ。
それを確認したネヴァはハッチを閉じた。
重い胸部装甲が下がり開口部に蓋をすると、内部が暗闇に飲まれるよりも先にモニターが白く点灯。
ネヴァが手元のスイッチを押し込むと、素早く流れる文字の洪水が車両のコンディションを確認する。
結果はオールグリーン。
――システムスタンバイ。
「誉めてあげたんだから、壊してきても雷は無しね」
出撃間際、柄にもなく可愛らしい笑顔を見せるネヴァにシドは呆れて毒づいた。
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