エネミー ザードマン

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エネミー ザードマン

 雲一つ無い、抜けるような青空。  それは必ずしも爽やかな天気とも言えない。  容赦のない日差しの放射は体力無き者から更に体力を奪うのだから。  平たく言ってしまえば、暑い。  高層ビル群が直射日光を遮るものの、こんな都市部では風通しの悪さが災いし、動かない暖かな空気が作る、むせかえる程の蒸し暑さが人々からなけなしのやる気さえも奪って行く。  凶悪な太陽からの贈り物を照り返す黒いアスファルトに今日もこぼれた汗が吸い込まれる。  野戦服で全身を包み、ヘルメットとサングラス、厚手のブーツを装着してカービン銃を携えた兵士達はそんな毎日に辟易しながらも、もはや天を呪うことにも疲れていた。  四、五人の兵隊の中心には戦車がいて、鋼鉄の装甲の塊は吸収した日光を周囲にまき散らす。  空には熱源。  中心にも熱原。  そして彼等を包む空気も暑苦しい。  だが兵士達は文句も言わずに、目玉焼きが焼けそうな鉄板に砲塔と無限軌道を取り付けた大きな箱を守るようにしずしずと前進している。  随伴兵達からすれば、この灼熱地獄の中、閉鎖された箱の中に男同士でスシ詰めされる戦車兵よりもマシだという、自分達への言い訳ができるだけ救いがあったのかも知れない。  このうんざりするような空気の中、奴等は今日も現れる。
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