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もう外は暗い。
隊長室から漏れる明かりに浮かび上がる三つの人影は小、大、中の順に並んでかまぼこ状の大きな建物へと移動していた。
会話は無い。
小さな人影と大きな人影はそもそも無愛想だし、最後尾の中くらい人影は小さな人影に怒られたくないので黙っている。
虫と蛙の鳴き声に三人の足音だけが重なっていた。
暗くて重苦しい空気。
短いはずの距離を長く感じさせる沈黙。
建物の人間用の出入口が開いた瞬間、ナオは思わず息をついたものだ。
内部に明かりは点いていたが人影は無く、しんと静まり返っていた。
「あれがあなたの担当する二号車。外装はちょっとアレだけど整備に抜かりは無いわ」
ネヴァは静かな建屋内で両足を投げ出して胸を開き休息している巨人兵を顎で指し示した。
横並びに三台ある内の真ん中のヤツだ。
「驚いた。こんなモノ本当に配備されていたのね。タチの悪い冗談だと思っていたわ」
ルリカはつまらなそうに吐き捨てて、二号車に近寄った。
確かに外観は余り良くない。
胸部の装甲は窪んでいるし、濃緑色の塗装もあちこち禿げている。
しかしコクピット開閉のダンパーは真新しいようだった。
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