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戦車は三両。
それぞれに四、五人の随伴兵を連れて慎重に周囲を探索する。
交差点に差し掛かり、戦車は足を止めた。
曲がり角に出た途端にドカン、なんてのはよくある話だ。
随伴兵の一人がそろりと建造物の角に張り付いて、先の様子を伺う。
そんな彼等の様子をすぐそばのビルの上から見下ろすものがある。
四本足で外壁に爪を立て、垂直に貼り付いたそいつはまるでトカゲそのものだ。
ひょろ長い胴と鞭のようにしなる尻尾。
ウロコに覆われた頑丈な皮膚。
そいつは舌なめずりでもするように長い舌をチロチロ見せて、ガラス玉みたいな両目をぱちくりさせると、戦車めがけて飛び降りた。
戦車の最後尾につけていた随伴兵がそれに気付く。
「上だ! 上に……!」
巨大な影が彼に襲いかかる。
地震のような振動が聞こえた。
振り向いた仲間達が見たのは巨大な影に頭から丸飲みにされつつある、仲間のバタついた両脚。
兵士達は慌てて銃を構え、背後を取られた戦車の砲塔がノロノロと回頭する。
人間を丸飲みするトカゲ。
その大きさたるや人間の二、三倍……あるいはそれ以上。
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