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腰を落として列をなし、装軌でアスファルトの路面を砕きながら巡航する三体の巨人兵。
三体共、右手には戦車砲にトリガーとフォアグリップ、弾倉を取り付けたような主砲を持っていたが、左手の持ち物が違っていた。
先頭の奴は左腕に大きな杭の打ち出し器を付け、そいつの左後方の奴は二連装の大型ガトリングガン。
右肩には予備弾倉、左肩に外部電源装置。
右後方の奴は左手には何も持ってはいない。
彼らの進むそこは先程の市街地。
真っ暗な夜の支配者の手に堕ちたビル群の森。
人の気配どころか、建物の内部を照らす照明も、街を優しく浮かび上がらせるはずの街路灯も、信号機すらも消えた、真新しい廃墟の街。
一時退去のはずだった住人達は今頃、突然の不幸に対する不安と状況の理不尽に対するやり場の無い怒りに飲まれ大騒ぎだろう。
そんな喧騒すら、この場に伝わってくる事はない。
人が長年かけて作り上げた蒸し暑い夜の森。
アスファルトとコンクリートの迷路。
蒸し暑いはずなのに寒々しく感じる程、しんと静まり返ったそこには、もはや前日までの名残は無かった。
「来てくれたか、リトルウィッチ!」
無線から若い男の声がした。
先頭の巨人兵の内部にいる小さな少女はやれやれと溜め息をつきたくなった。
「こんな時に限ってしおらしいのね。嬉しいわ」
「当たり前だ、こんな時でもなければお前達をアテにしたりはしない」
言葉通り、さも当然という口調をうけて、ネヴァはそういう事かと苦笑した。
「まずい状況ってのは分かった。それで?」
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