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だがしかし、祈らなければならないという事は、自分達の希望が楽観でしかない事を理解しているということの裏返しだ。
戦車長も砲塔から顔を出し、双眼鏡を覗いている。
ややあってガラン、と瓦礫が動く音がして、兵士達は絶望的な気分になった。
たまたま瓦礫が動いた。
そういうこともあるだろう。
しかし、それこそ楽観だ。
埋もれていた何かが動くことでその上に乗っていた瓦礫も動いた、と考えた方が理にかなっている。
煙幕の中にいる相手に攻撃を加えても効果は薄い。
だから彼等は相手が姿を見せるのを震えながら待っているしかなかった。
少しずつ粉塵が薄れてきた、その時。
兵士達は一斉に発砲した。
化け物のシルエットがそこに見えたからだ。
標的は銃弾に怯むことなく踊り上がって、鋭い爪の生えた前足で兵士達をなぎ払う。
鋭利な爪に引き裂かれた兵士達の血と臓物が飛び散り戦車に引っかかった。
狼狽える戦車長。
だが遅い。
巨大トカゲは前足を砲塔に引っかけて、力任せに引き剥がした。
「うわあっ!!」
砲塔ごと投げ捨てられる戦車長。
残された搭乗兵達に彼を心配する余裕などなかった。
頭上には人喰いトカゲの巨大な影。
「い……嫌だァッ!!」
搭乗兵の一人が頭を抱えて叫んだその時、打撲音と共に化け物の巨体が弾き飛ばされた。
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