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おまじない――序
寒空に落とされた花びらを掴み取って、
少女は頬を染めて笑んだ。
桜が舞い散る中、
その花弁を空中で取ることができたら
願いが叶うと言われている。
そしてそれを、誰にも見られずに
土に埋めることができたら、である。
少女は、辺りに人影がないのを
確かめてから、桜の木の根と根の間を
素手で掘り始めた。
適当な穴ができると、
両手でやさしく花びらを包み込み、
頭の中で願い事を唱えた。
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