恋願う――第1章

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恋願う――第1章

 ――どうか叶いますように。  少女は花びらを穴の中に入れて 土をかけ、軽く押さえた。  そっと手を合わせて、 彼女はやはり真剣に祈る。  穏やかな風が彼女のそばを 通り過ぎ、まるで動かない姿勢に 感心しているようだった。  彼女の髪は黒く真っすぐで、 闇夜に生きる空気のように さらりと軽やかだ。  セーラー服の少女は、朝早く、 誰にも会わない時間帯を選んで 学校の裏庭にやって来ていた。  小柄なその体を、緊張と高揚感、 不安と意欲が覆っている。  内気な彼女は、想いはあっても なかなか行動に移せずにいた。  そのため少しでも勇気をもらおうと、 ここでこっそりと 願い事を叶えようとしているのだ。
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