理解不能、馴合

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「え」  ぴたりと手を止め、エイダは笑顔のまま表情を凍らせた。  数瞬の後――彼女の言葉をようやく飲み込んだエイダは、せっかく集めたページをばさっ! と芝生にぶちまける。 「え、な、わ、なんで」 「ヒトの言葉を喋らんかい」 「ひひひめっ! し、処刑とゆーのは」  今にも掴みかからんとする勢いでフラフラと彼女の前に立てば、今度はエイダが少女を見下ろす形になった。その身長差をものともせず、少女は睨むように見上げ返してくる。 「そのまんまの意味だ。王達が何代も守ってきた、お前の封印を解いたんだからな。死刑は当然だろう」 「――そんな」 (……珍しいな)  普段滅多にその穏和な笑みを崩さない彼が、明らかに焦りをにじませ、青ざめている。がっ! と彼女の両腕を掴むと、今にも泣き出しそうな情けない顔で懇願した。 「姫っ、なんとかしてくださいぃ~!!」 「無茶言うな! 大体、お前をここに置いとくのもバレたらどうなるかわかってるのか!?」 「知りません~! とにかく、彼女を殺しちゃダメですぅ! 絶対ぃ!」 「ぇえい、はなせっ!」  ばっとエイダの手を振り払い、彼女はまるで小鳥のようにふわっと宙に飛んだ。 「なんだ、なんでそんなにこだわる? フィオを知っているのか」 「違いますっ、彼女は知らない子です! でも……なぜだか、殺しちゃダメなんですよう!」    理由もなく殺すなと言う。エイダの無視も殺せぬような優しい心遣いに、少女は胸の内からどす黒い感情がせり上がってくるのを止められなかった。 「……――ボクだって!」  ぎり、と強く握りしめた拳が、かたかたと小さく震えている。 「……自分の妹のように可愛がってたやつを、なんで殺さなくちゃならないんだよ……」  その声は小さく、風に溶け消えてしまいそうだった。けれど、きつく寄せられた眉に、今にもあふれそうな大きな瞳に、痛いほど彼女の苦しみを感じて。  エイダはもう、黙ることしかできなかった――
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