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季節は冬。
一人の少年が、路地裏に座りこんでいる。
両足を伸ばし、塀に背中をあずけている少年の体は、まるで死体のようで、うっすらと雪が積もっている。
街には、夕闇が迫っていた。
たまにこの路地を通る人も、座りこんでいる少年に気づかないふりをして、通りすぎて行く。
少年は、閉じていた目を少しだけ開いた。
雪が積もり、すっかり冷たくなった、裸足の爪先がみえた。
もう、体温で雪が溶けることもない。
それほど、少年の体は冷えていた。
(ここまでか。)
少年は、自分が生きている意味、自分に封印されている‘ある物’についてを知るために、生きてきた。
(だけど、もう無理だ。)
少年は目を閉じた。
意識が遠退いていく。
気持ちが‘スッ’と楽になる。
このまま死んだらもっと楽になれるだろうな。
でも……。
少年は、少しだけ不安になる。
死んだら、どうなるんだろう。
‘神の元に帰る’か。
少年はすでに死んでいる、親友の言葉を思い出した。
少年は‘フッ’と笑った。
そして、意識が遠く、遠く……。
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