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アリッシュは武具の類いは身に付けてはおらず、仕草も自然体。
周りに印象付けるような雰囲気も、何も発してはいなかった。
にも拘わらず、冒険者ギルドのホリーとマラカイは、只人とは思えない何かを感じていた。
マラカイに至っては、事武力に於いては格上だと、素直に認めてしまう。
不思議な印象だと、2人は思う。
特にマラカイは、現役の冒険者。
死線を潜り抜けて来た回数は、最早1度や2度ではない。
視界や足場の悪い森で、気配を殺した『テラー』が死角から襲って来るような場所が未開拓領域だ。
当然、熟練者とも為れば、魔法での探知や第六感が自然と鋭くなり、鍛えられていく。
明確な原理で紡ぐ魔法を武器としながら、熟練冒険者は、根拠のない直感を優先する場合が多い。
だからか、不意に現れた不可解な存在感を放つ少年が、気掛かりでならなかった。
「見た感じは、十代半ばに届いてるかどうかって処か。
だが……余りにも自然体過ぎる。
それが逆に不自然だ。
どんな経験を積めば、あの年頃で、ああも達観出来るのか……俺には想像も付かないな」
「あたしも同意見だよ。
いい大人でさえ、初めて此所に来た奴は畏縮するもんだ。
外とは空気が違うってね。
多分だけど、アリッシュはそうした圧迫間や気配、威圧に慣れてる。
あまり詮索するもんじゃないけど、どうにも興味深いね」
マラカイもまた同意を示すように首肯する。
他人にこうも興味を引かれるというのも珍しいと感じながら。
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