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「ホリー。
もし俺が居ない時に、彼が来たなら……」
「まぁ、気になるんだろ?
冒険者になる意思が有るようだったら、あんたに紹介してやる分には構わない。
でも、良いのかい?
あたしらの気のせいで、足手纏いになる可能性だって……」
ホリーの杞憂に対し、マラカイは苦笑を浮かべる。
「その時はその時だ。
だが……俺の勘では、どう転んでも後悔はしないと思う」
口角を吊り上げ、不敵に笑んでみせるマラカイ。
その挑戦的な表情を前に、ホリーは嘆息する。
「……あんた、ギャンブルは嫌いな性分じゃなかったのかい?」
「博打は嫌いだが、勝つと分かってるなら普通賭けるだろ?
たまには刺激的なスパイスも必要さ」
それだけを言い残し、マラカイは席を立ち踵を返す。
「珍しく良く喋る……
もし探索に連れて行く事になっても、注意だけは怠るんじゃないよ?」
ホリーの警告を背に受け、マラカイは右手を軽く振って応えると、再び仲間の待つテーブルへと戻って行った。
確かに、興味はある。
だが、それを依頼遂行に重ねるのは別な話であり、危惧する処である。
多くの冒険者を見送って来たホリーとしては、マラカイの興味本意な行動が、不測の事態を招かなければ良いがと……そう、案じるばかりであった。
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