流転の先に

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「私は……」 この国に、何故来た? 逃げる為か。 「私は……っ」 こんな消極的な自分が嫌い。 こんな、弱い自分が嫌い。 「アリッシュ……私は」 直ぐに変われるのなら、もう変わっている。 直ぐに受け入れられるのなら、もう受け入れている。 けれど、自分の指先を見る度に、やはり嫌悪は消えてくれない。 「……自分が嫌い。  だから」 メイの無機質だった瞳に、徐々に光が灯る。 今の自分が嫌いだった。 自分は何故、研鑽を重ねて強者となった? それは、アリッシュと共に在る為だ。 あのルビニアとの無意味な立ち合いに、自分は何故命を懸けた? それは、自分の誇りを護り、汚したくなかったからだ。 自分が高みに在ると、傲る訳ではない。 只強く、気高く、誇り高く在りたかっただけだ。 あの自分は何処へ行った。 何故この国を訪れた。 逃げるのではない。 取り戻す為に。 再び生きる為に。 此所に、今自分は在るのではないのか。 「……」 直ぐには変われないだろう。 恐れも、全て払えはしないだろう。 それでも。 強く、只強く決意を。 メイは、身体に英気を宿らせ立ち上がる。 そして……幻覚魔法を、解除した。 まやかしで誤魔化す自分を、強引に打ち払うかのように。
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