流転の先に

14/44
前へ
/137ページ
次へ
「……私ね」 そんな少年の葛藤を知ってか知らずか、少女は己れの決意を口にしていく。 「少しずつでも、受け入れて行こうと思うんだ。 直ぐには無理でも、努力していかなきゃね」 自分自身を見詰めて、自分なりに答えを見出だす。 それが出来る女性である事を、アリッシュは改めて再認識させられた。 メイの強さを、理解しているつもりでいた。 感情まで把握出来てしまう異能を持つが故に、その人を、無意識に知った気になっていたのかもしれない。 そんな浅薄な自分に気付かされ、只護ろうとしていた事が恥ずかしく思える。 「だから、もう魔法で誤魔化すのは止める。  私、頑張るから」 気丈に振る舞う彼女が、今も臆病な自分自身と戦っているのが分かる。 だから、“僕”も彼女を庇護するような真似は辞めよう。 これまで互いに背を預け、隣り合い、支え合って来た。 それが“僕”達の関係だった筈。 だから。 メイを下に見る事だけは、決してしてはならなかった。 それは、必死に努力し続けて来た彼女への侮辱に他ならない。 「……うん。  頑張ろ。  一緒に頑張って行こう」 「うん!」 メイは、少年の賛意を汲み取って朗らかに頷き、そしてアリッシュは、己れに戒める。 彼女の幸福を願う一方で、無意識下にあった傲慢さを打ち払うように。
/137ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加