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「……私ね」
そんな少年の葛藤を知ってか知らずか、少女は己れの決意を口にしていく。
「少しずつでも、受け入れて行こうと思うんだ。
直ぐには無理でも、努力していかなきゃね」
自分自身を見詰めて、自分なりに答えを見出だす。
それが出来る女性である事を、アリッシュは改めて再認識させられた。
メイの強さを、理解しているつもりでいた。
感情まで把握出来てしまう異能を持つが故に、その人を、無意識に知った気になっていたのかもしれない。
そんな浅薄な自分に気付かされ、只護ろうとしていた事が恥ずかしく思える。
「だから、もう魔法で誤魔化すのは止める。
私、頑張るから」
気丈に振る舞う彼女が、今も臆病な自分自身と戦っているのが分かる。
だから、“僕”も彼女を庇護するような真似は辞めよう。
これまで互いに背を預け、隣り合い、支え合って来た。
それが“僕”達の関係だった筈。
だから。
メイを下に見る事だけは、決してしてはならなかった。
それは、必死に努力し続けて来た彼女への侮辱に他ならない。
「……うん。
頑張ろ。
一緒に頑張って行こう」
「うん!」
メイは、少年の賛意を汲み取って朗らかに頷き、そしてアリッシュは、己れに戒める。
彼女の幸福を願う一方で、無意識下にあった傲慢さを打ち払うように。
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