邂逅の時

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だが、漂い伝わる印象は様々だ。 穏やかな表情。 だが、其所に居るだけで引き込まれるような、圧倒的な存在感。 けれど、気圧され、圧迫されるような重圧を感じない。 いや、単に今そうなだけなのか。 そして、アリッシュは1つ確信する。 今も尚感じている、探査魔法に類似した何か。 それは、彼だ。 彼が発動し続けている。 空間を伝達する感覚が、無意識に彼を探ろうと働き掛けた。 それは、強者故の本能か。 男性に敵意などない。 それなのに、とても無警戒ではいられなかった。 「そうか?  まぁ、客? だもんな?」 「全く改める気ないでしょ、あんた。 だからいつまで経ってもガキだってのよ」 「んだとコラァ」 片や、アリッシュの隣では、赤髪の青年と灰髪女性が口論している。 なんとも、温度差の激しい空間である。 「イバイロもレゾも、その辺にしておけ。 まったく……とんだ醜態だ」 そう吐き捨てたのは、黒の男性の後に登場した、竜人。 白と緑色の鬣に、白に近い蒼白の肌。 外骨格のような硬質に見える尾が特徴的な亜人。 竜種が人型に変異したと言われても、納得してしまいそうな見姿。 身長は黒の男性より頭2つはある巨躯の持ち主だった。 「止してよ。  恥晒しはイブだけよ。 あ~あ、こいつのお陰で国の品性が疑われるわ~」 「てめぇにだけは言われたくねぇ。  この露出魔」 「誰がよ!」 「どはぁ!?」 口喧嘩の果てに、遂にはレゾの前蹴りがイバイロの横腹に炸裂する。 全く収まる気配がない。 火に油を注いでるな……と、アリッシュは客観的に思ったりした。
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