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「……ちょっと、なんか言いなさいよ」
そんな、イバイロの横柄な態度を見兼ねたレゾが諌めるが。
「別に宜しくする気もされる気もねぇ。
俺は、問題起こされなきゃそれで良い」
「あんた……本気で言ってる?」
イバイロの発言を耳にし、レゾは怪訝に、そして冷淡に問い返す。
先程の口論とは空気が違う。
他の面々も、いぶかしげな表情だった。
「済まんな、普段このような態度を取る事はないんだが。
後で事情の程を問い質しておく」
「いえ……僕は気にしていませんから」
少々張り詰めた空気の中、努めて穏やかに接するギャザリンの声音が、その場の緊張を幾分緩める。
一方のアリッシュも、当たり障りのない対応を示した。
とは言え、全く気にしていない訳でもない。
彼が、何故こうも自分に警戒色を強めているのか、アリッシュには理解出来なかった。
何か気付かぬ内に、粗相をしでかしていただろうか?
「さて、紹介を続けさせて頂く。
最後に、三軍の将であり、軍事総官も兼任するレザーナ・ヴァレリーだ」
「……軍事面を総括しているレザーナだ。
彼の国では2人が世話になった。
以降宜しく頼む」
幾ばくか無理矢理話を戻したギャザリンと、憮然とし続けるイバイロの様子を一瞥し、レザーナは簡潔に挨拶を済ませる。
巨漢である事もさながら、武人としても一級である彼からは、無言の覇気が滲み出ていた。
「いえ、こちらこそ、他国の方と接する事ができ、大変勉強になりました。
宜しくお願いします」
アリッシュは、亜人である竜人に、少なからずの好感を抱いた。
纏う空気が、印象が、これまで接してきた強者の面々に酷似している。
その為か、慣れない場でありながらも、心境は落ち着いていく。
それに、発言も社交辞令ではなく、本音であった。
彼女達との邂逅が、今の状況の指針となったのだから。
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