邂逅の時

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「彼らとは建国以前からの付き合いでね。 立場上は臣下だが、俺の良き友人であり、家族同然の付き合いだ。 常日頃、皆には支えて貰っている。 これまでの俺は、彼ら無くして有り得ない。 そういう意味では、テイカー君に今日紹介出来て良かった」 「その、こちらこそ……光栄です」 シルバニアにとっては、革命の立役者。 そして、旧ラミラリーダ王国にとっては不倶戴天の仇敵。 人間社会に蔓延する評価もまた、混沌をもたらす元凶と語っているらしい存在。 二立相反。 対極的な見地。 それを体現する者達が今、アリッシュの前に介している。 これまで少年にとって、それは遠い異国の、無関係な事柄に過ぎなかった。 けれど、アリッシュは今そこに居るのだ。 最早無関心ではいられない。 それらを、少年は今更ながらに、強く意識させられた。 「君にとっては、複雑かな。 俺達の印象が、あまり良くないだろう事は承知している。 それでも……より良い関係性を築ければと考えている」 控え目なれど、ギャザリンはアリッシュに対して1歩踏み込む。 その言動から、何を望み、期待しているのか。 「僕もあなた方とは、相互理解の元に、良い関係でありたいと思っています。 ですが……なんらかの要求を目的とされるのならば、応じかねます」 ギャザリンの言葉を深読みしたアリッシュは、表情や挙動に然して顕さないものの、警戒色を強める。 武力として利用されてきた過去が、権力者の言動を猜疑的に汲み取ってしまう。 反射的に、悪意を探る癖が付いていた。 「誤解させたかな? 何も、英雄である君に無理を強いるつもりは毛頭ない。 特別に待遇する意思も、俺にはない。 只、良き友人として接してくれればと思うだけだ」 「友人、ですか……」 曖昧なニュアンス。 故に、アリッシュの警戒は未だ解けない。 「エクストラにレゾとは面識もあるだろうし、特にレゾとイバイロに至っては、よく街中を徘徊している。 たまに顔を合わせた時に、挨拶の1つもないのは寂しいだろう?」 「確かに、そうですよね」 平素に返すアリッシュの中に、疑念ばかりが沸き上がる。 主旨が見えない。 目的はなんだ? 徐々に懐柔するつもりなのか? いや、それにしては…… 胸中がざわつくものの、アリッシュには、目の前の男性の意図が読み切れなかった。
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