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魔王と英雄の対談は当たり障りなく終了した。
交わした内容は薄い。
互いに様子見、そんな表現が的確だろうか。
それでも、少なからず人となりは知れた。
「そろそろ時間だな。
今日は有り難う。
再度顔を合わせる事はそうないだろうが、もし相談事があるようなら、行政の方で対応させて貰う」
公務担当者らしき亜人男性の入室により、ギャザリンはそう締め括る。
アリッシュもあまり長居してはと、それに応じて席を立った。
「ありがとうございます。
お言葉に甘える事もあるかと思いますので、その時は宜しくお願いします」
物腰の柔らかいギャザリンへ、アリッシュもまた微笑で返す。
言葉交わす内に、幾分緊張は取れていた。
「アルフリオ、彼を送ってあげてくれ」
「畏まりました」
公務担当者の後ろに控えていた、部屋まで案内をしてきたアルフリオに導かれ、アリッシュは静かに応接室を後にして行く。
その背中を、一同は様々な思慮の元に見送っていた。
「……さて」
少年の去った応接室にて、ギャザリンは感慨深げに口を開く。
その目線の先は、イバイロ。
「どうした?
普段の君らしくもない」
終始に渡り、警戒色を滲ませ続けた赤髪の青年へと疑念を放る。
未だ、表情は険しいままだ。
「……なんで、あんたらは平然と話せるんだ?」
数拍の間の後、イバイロは逆に問おた。
その口調は重い。
「イブ……?」
示唆する処を測り兼ねるレゾ。
他の面々も同様だった。
「アイツはやばい。
一目見てそう思った。
この先、必ずアイツは俺達の障害になる。
殺せるなら、今すぐにでも殺したい」
「イバイロ……?
何を言っている?」
レザーナさえ、そこまで危険視する意味が分からず、その言動に困惑していた。
「根拠は?」
これまで共にしてきた中で、このような反応を示した事など1度足りともない。
故にギャザリンは、このイバイロの確信めいた言葉を、簡単には流せなかった。
「俺の勘だ」
「勘、て……断言しておいて、随分アバウトな返答ね」
釈然としない答えに、レゾは溜め息を溢す。
けれど、至って冷静に言い切る彼の意見を、否定はしない。
イバイロが真に何を感じたのか、それを少しでも理解しようと努めていた。
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