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「それで?
あんた自身の見解はどうなのよ?」
無遠慮なレゾの問いを受け、ギャザリンは苦笑する。
「彼は思慮深く、頭もいい。
加えて洞察力も相当なものだ。
敵にはしたくないな」
「ギャズもテイカー君は危険だと思う?」
アリッシュの印象を語るギャザリンに、エクストラが問う。
それに対し、黒の王は頭を振った。
「いや、俺にはそうは見えなかった。
彼は、恐らく戦闘行為に否定的だ。
事前にレゾから聞いていた人物像に、やはり近い印象を受けた。
問題の王子側に加担するような性格ではないだろう」
「では、どうするのだ?
何もしないのか?」
反応を窺うレザーナに、ギャザリンは首肯する。
「王子側や、反体制派への警戒に努めてくれ。
今はそれでいい」
「今は、ね」
含みのある言動に、レゾは嘆息する。
「イバイロの直感だけを鵜呑みには出来ない。
だが、先行きは不明だ。
もしもの場合は、対処する事を念頭に入れておいてくれ」
ギャザリンの決断に各自異論はないものの、それでも、レゾとエクストラには躊躇いが見て取れる。
イバイロを無視する訳ではないが、アリッシュという人物は、実直で生真面目、尚且つ生産的な趣向の持ち主と記憶していた。
故に、自らを窮地に立たせるような振る舞いを、彼が行うとは思えなかった。
感情論を度外視しての、客観的な視野でそう思えるが故に、イバイロの反応に困惑してならない。
来る明日に差した、不鮮明な影。
それを、一同は意識せずにはいられなかった。
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