栄冠ナイン～Nine of a glory～

夏の大会に向けて

　二人は軟式ボールを使い、キャッチボールをし始める。ボールがグローブに収まる、革独特の音が公園全体に響き渡った。

　しばらくボールが互いに入れ代わって行った。

「ねぇ～拓斗？」

「ん？　どうした。」

「アタシ達……この次の大会が最後なんだね。」

「そうだね～。去年の秋季大会は二回戦で負けたっけ……おしかった記憶があるよ。」

「今度入る新入部員でさ、即戦力の子着たら良いね！　そうしたら、地区予選優勝出来るかもよ！　それでそれで！　県大会行っちゃってさ！」

「そうだね、最後位優勝したいよね。てかさー未来？　お前、コントロール良くなりすぎじゃない？」

「え？　普通じゃない？　私変わってる？」

　未来は簡単に言うが……拓斗とキャッチボールしてる間、拓斗はミットを動かしてないのだ。つまり、構えた所に未来は投げてる。

「簡単に言うなって……。」

　しばらくキャッチボールをして、二人とも肩が暖まってきた頃になる。

　季節は春なので、体温と気温の温度差が心地好かった。ボールを見つめて未来は一言言う。

「ねぇ！　軽く投げていい？」

「良いよ。」

　未来が腕を回して準備をする。一方、拓斗は数メートル離れ座る。

「じゃあいっくよ～！　私の球、久々に受けるでしょ?」

｢そうかもな。部活では、俺も未来も投げこみばっかりだったもん。｣

　軽く手首を振って準備を整える。その場に腰を下ろして、捕球体制になる。