夏の大会に向けて

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「行くぞ!」  監督は初川に向けて軽めのセカンドゴロを打つ。 しかし初川は苦難無く簡単に取った。 「ほう……もう一丁!」  今度は、ややファースト寄りのライナーを打った。これは初心者だとビビって動けないはずだ。 (これ位なら……) "バシッ"  初川はビビらず、正面に移動してすんなり取る。 「へぇー。アイツ一年生の割にやるなぁ。亮介より守備上手いんじゃね?」 「うるせぇ! 俺は打てるから良いんだよ!」  ギャーギャー騒ぐ亮介。誠也はへらへら笑い、釣られて回りの皆も笑う。 「おーし。……あ! ミスった!」  なんと、監督はファースト側に強めのゴロを打つはずだったが手が滑り、セカンド側の痛烈ライナーを打ってしまった。これは好守レギュラーの誠也でも厳しい。 「!!」  誰もが諦めると思ったが、初川は横に飛びついた。宙に浮きボールに追いつき届くのか?  若干土に塗れ、小汚くなるが……ボールはミットに収まっており、回りから歓声があがる。なんとダイビングキャッチをしたのだ。 「初川すげーじゃん!」 「やるなぁ!」 (恥ずかしい……)  順番を待っていた一年生が初川の元に寄ってきて盛り上がる。 (今のを取るとなると……守備力はレギュラークラスか。もう少しアイツの力見てみたいな。)  少しニヤリと笑う監督。夏の大会が楽しみになりそうだ。手に持っていたバットを地面に置いて叫んだ。 「よし、そこまで! 初川!!」 「はい!」 「お前の力をもっと知りたい…。お前は後で二年生達と同じフリーバッティングをしてもらう。よし次はレギュラーとベンチの奴らだ! 急げ!」 「「おっす!」」  亮介達は、慌ててバットをおいて監督の前まで行きノックを受けた。
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