夏の大会に向けて

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 一年生の守備力も大体わかり、レギュラーメンバーとベンチのノックが始まる。  監督の顔つきが変化した。どうやらさっきのノックは軽くだったらしく先程より強い打球がグラウンドに飛び回る。 「よーし。15分休憩する! 次はフリーバッティングだ。」  監督のノックはハードであり、殆どの部員がへとへとになってしまった。 「ぜぇ……ぜぇ……あの監督ファーストに打ちすぎだろ……。」 「監督の愛情だな。エラーするたんびに鬼になってたし。」 「そーっすね!」  一部のメンバーが笑い、ほのぼのする。確かに……監督はファーストに打つ度にニヤニヤしてた。  ぐったりする中、拓斗と未来は初川の元に行く。周りの一年と比べても、まだまだ余裕を感じる。初川には何か貫禄を感じるのだ。 「初川くーん。」 「はい!えっと…」  未来が呼び掛けると、元気良く返事をするが名前が解らないのかしどろもどろする。 「あぁ名前まだだったね! アタシ綾瀬未来よ! 三年生でピッチャーなの。下の名前で呼んでね~。」  初川は手を握られて少し戸惑った。女の子との交流が少ないのかな? 「未来先輩ですね。隣の先輩は……?」  視線があった。未来はわかったが俺のことが解らないようだ。 「おっと、俺は七里拓斗。好きな方で呼んでくれ。未来と同じでピッチャーだ。」 「拓斗先輩ですね。これからよろしくお願いします!」 握手をしてお互いを知ろうとした。良い感じで喜ばしい。 「なぁ初川。リトルやってたと言ってたな? 何処のリトル?」  この辺には数多くのリトルがある。強い所もあるから気になるようだ。 「たいした所じゃ無いですが……」 少し戸惑いながらこちらを見てはっきりと言った。 「僕は、あかつきスターソルジャーズで、一番セカンドをやってました。」
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