第二十二章

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昨日、ユウヤ兄ちゃんと別れた後、 私は夢中で駆け出していた。 周りの景色には目もくれず、 一直線にユウヤ兄ちゃんの家を目指した。 久しぶりに見たユウヤ兄ちゃんの家。 でもあの時の私には感慨に浸る暇はなかった。 玄関はユウヤ兄ちゃんの言っていた通り鍵はかかっていなかった。 私は家に入ると玄関に鍵をかけ、 家中の他のドアや窓にも鍵をかけ、 カーテンを閉めた。 そしてソファの上で丸くなりながら、 ガタガタと震えていたんだ。 私は不安で堪らなかった。 早くユウヤ兄ちゃんに帰ってきてほしい。 そればかりを考え時計を見つめていた。 そして気が付いたら、 次の日の日中帯になっていて、 ユウヤ兄ちゃんが家にいたんだ。 「ユウヤ兄ちゃん、どうやって家に入ったの? 家中どこも鍵をしたはずだけど。」 「あぁ、これさ。合い鍵。 財布の中にいつも合い鍵を入れているんだ。 だから家に入ることが出来たんだよ。」
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