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あの日は、寒い夜だった。
父さんの仕事が上手くいった祝いだと、
母さんが夕飯にすき焼きの仕度をしていた時だった。
「あら、うっかりしていたわ。
卵が足りないみたい。
誰か近くのコンビニで買ってきてくれないかしら?」
「えー、私は嫌だよ。寒いもん。お兄ちゃん買ってきてよ。」
「俺は部活で疲れてんの。姉ちゃん買ってきてよ。」
「もう。それじゃあ、公平にじゃんけんで決めましょう。」
その結果、じゃんけんに負けた俺は、
自転車で近くのコンビニに向かった。
外は寒く、俺は力一杯自転車をこいだ。
「ただいま。
あ~、腹減った。夕飯の仕度終わった?」
そう玄関で呼びかけても、何の応答もなかった。
「何だよ。せっかく卵買ってきたのに。聞こえてんの?」
俺が居間のドアを開いた時だった。
今でも鮮明に覚えている。
血に染まった、姉と妹の姿を。
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