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「ひどいもんだねぇ」
思わず溢せばゆのかの肩が小さく揺れて、
「どうして、急にこんな病が……」
唇を噛み締める。
これから向かう場は、自然に人の心に寄り添ってしまうこの子には、酷な所に違いない。
「アンタ、本当に着いて来るのかい。きっと見て楽しいもんじゃないよ」
あたしから、引き離す為じゃない。
唯、この子の心が心配になって、思わずその気持ちが、口から漏れ出てしまった。
けれど、
「知って……います。お手伝いさせてもらっている診療所で、患った人を幾人も見ました」
返って来たのは思わぬ強い眼差しと、そんな台詞。
「苦しんでいる人を見るのは悲しいですが、辛くはありません。何も……何も出来ない事が、辛いんです」
しかしすぐにその目には悲哀が満ち、細く白い指先が、握り締められた。
弱々しさの中の、強さ。この子が時折見せるそれに、はっとさせられる。
握り締められた手を取り、力を抜く様に解く。
「あんまり、思い詰めるんじゃないよ。病なんだからね」
本当の所、病かどうかは怪しいけれど、そいつは今は、伏せて置いた方がいいだろう。
もう一度、労る様に手の平を撫でて、呻き声が続く奥の間の襖を開いた。
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