十.動き出す悪意

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診療所の前で、立ち止まるあたしをゆのかが待っている。 中まで付き添う気、だよねぇ。 最初に弱った所を見せている所為か、あの子は随分とこちらの具合を気にしている様だ。 とは言え、駆け通しだった神田に着くまでと違い、それも今は落ち着いている。 優しいあの子は簡単には引き下がらないだろうし……さて、どう言い抜けようかね。 「ここまでありがとうよ、ゆのか。あたしもお目当ての場所に辿り着けた訳だし……ここで、お別れと行こうじゃないさ」 まずは順当に、別れを告げる。 それに対してゆのかは、右に左にと目をさ迷わせた(のち)、必死な面持ちをこちらに向けた。 「でっ、でも、ここまで来たんですし、えっと、最後までお供しても、同じじゃ……」 まあ、そう言うとは、思ったけどね。 こちらを伺うその顔には、はっきりと『心配です』と、書いてある。 あぁ、もう……お人好しだねぇ。 ──尚更、付き合わせらんないよ。
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