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診療所の前で、立ち止まるあたしをゆのかが待っている。
中まで付き添う気、だよねぇ。
最初に弱った所を見せている所為か、あの子は随分とこちらの具合を気にしている様だ。
とは言え、駆け通しだった神田に着くまでと違い、それも今は落ち着いている。
優しいあの子は簡単には引き下がらないだろうし……さて、どう言い抜けようかね。
「ここまでありがとうよ、ゆのか。あたしもお目当ての場所に辿り着けた訳だし……ここで、お別れと行こうじゃないさ」
まずは順当に、別れを告げる。
それに対してゆのかは、右に左にと目をさ迷わせた後、必死な面持ちをこちらに向けた。
「でっ、でも、ここまで来たんですし、えっと、最後までお供しても、同じじゃ……」
まあ、そう言うとは、思ったけどね。
こちらを伺うその顔には、はっきりと『心配です』と、書いてある。
あぁ、もう……お人好しだねぇ。
──尚更、付き合わせらんないよ。
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