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「分かったよ……じゃあ、この中までは一緒しようじゃないか」
まるで言い訳の様に、溜め息を一つ。
結局、ゆのかを伴って中に入る。
──この子の真っ直ぐな目は、あたしにゃ眩しすぎるよ。
そう、心の中で一人ごちながら。
一歩踏み込めば、気分も鬱々とする呻き声が、出迎えた。
思った以上に、患者の数が多いかもしれない。そんな嫌な予感が過る。
そしてそれは、間違っちゃいないだろう。
隣に立つゆのかの顔色が青白い様にも見えるけれど、口元を引き締め、前をしっかり見つめてはいる。
──大丈夫そうだね。
そう判じ、更に奥に足を進める。
進めば進む程、呻き声は大きくなり、夜も更け様というのに、病に侵された連中は、寝る事も儘ならないみたいだ。
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