十.動き出す悪意

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「分かったよ……じゃあ、この中までは一緒しようじゃないか」 まるで言い訳の様に、溜め息を一つ。 結局、ゆのかを伴って中に入る。 ──この子の真っ直ぐな目は、あたしにゃ眩しすぎるよ。 そう、心の中で一人ごちながら。 一歩踏み込めば、気分も鬱々とする呻き声が、出迎えた。 思った以上に、患者の数が多いかもしれない。そんな嫌な予感が過る。 そしてそれは、間違っちゃいないだろう。 隣に立つゆのかの顔色が青白い様にも見えるけれど、口元を引き締め、前をしっかり見つめてはいる。 ──大丈夫そうだね。 そう判じ、更に奥に足を進める。 進めば進む程、呻き声は大きくなり、夜も更け様というのに、病に侵された連中は、寝る事も儘ならないみたいだ。
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