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意識が遠のく。
まるで巫女の様に、憑世見を呼ぶ祝詞が、口から勝手に零れ落ちて行く。
そして──
あたしはあたしでありながら、憑世見となる。
そのまま、呻き声を上げる刀次の子分を覗き込んだ。たちまち、その輪郭は歪んで……
視える……何かが。
もうもうと立ち込める黒煙に、霞む景色。
いや、煙じゃない。
幾千、幾万の蝶。
それらが群れを為し、連なり、この景色を作り出している。
掻き分ける様に、意識を集中すれば、少しだけ、視界が開く。
奥に見える、あれは……?
そこだけ切り取ったみたいに、白く開けた場所。そこに、俯く女の背があった。
白いうなじと、上品な小袖。
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