十.動き出す悪意

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意識が遠のく。 まるで巫女の様に、憑世見を呼ぶ祝詞(のりと)が、口から勝手に零れ落ちて行く。 そして── あたしはあたしでありながら、憑世見となる。 そのまま、呻き声を上げる刀次の子分を覗き込んだ。たちまち、その輪郭は歪んで…… 視える……何かが。 もうもうと立ち込める黒煙に、霞む景色。 いや、煙じゃない。 幾千、幾万の蝶。 それらが群れを為し、連なり、この景色を作り出している。 掻き分ける様に、意識を集中すれば、少しだけ、視界が開く。 奥に見える、あれは……? そこだけ切り取ったみたいに、白く開けた場所。そこに、俯く女の背があった。 白いうなじと、上品な小袖。
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