四.お医者様でも草津の湯でも

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「どうしたィ。奇病の事で、何か掴ンだか?」 こッちも頭を切り替え問えば、一つ頷いて返した。 「はっきりとは分からねえから、さっきはもうちょいと調べてからにしようと思ったんだが……どうにもきな臭えんでな、一応親分にと思ってよぅ」 腕を組み、こちらを窺う持って回ったその仕草は、気の短い俺には邪魔臭いものでしかねェ。 「前置きはいい。とッとと話しな」 苛立ちも露に先を促せば、苦笑を浮かべ呆れ顔で首を振る寅一。 こいつも、見慣れた仕草だ。 もっとも、餓鬼の時はそのまま短気は損気という様な、説教臭い話に傾れ込んでいたモンだったが…… 鬱陶しいんだか有難ェんだか判断に困るトコだが、こいつと言い辰蔵と言い、ついでに言うなら松之丞の奴も、俺の周りにゃ説教好きが集まっているらしい。 「そう逸んなよ、親分。俺だってまだ確証があるわけじゃねぇんだ。とにかくよ、ここじゃマズい。一旦、組に引き上げようぜ、親分」 返事を待たず、寅一は白木組への帰路へと、歩を進めた。 確かにンな話をここでするのがマズいッてことにゃ、異論はねェ。 組までの道程を、殆ど駆ける勢いで辿る。
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