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多分夢だ。
確信があった。
今、俺の目の前にいる彼女はもういない。それを知っていたから冷静でいられたんだ。
「フェリーぺ、」
彼女は俺を通り越して誰かに話しかけている、いまにも泣きそうな顔で笑っていた。
「アタシはうんざりなのよ?」
真っ白いシーツの上、白いカーテンが揺らいで視界を埋め尽くす。
彼女は黒い髪を緩くなびかせていた。
「アンタは子供すぎるわ、あまりに一方的。」
俺を無視して語られるその台詞に俺は寒気がした。
俺しかまだ気がついていない矛盾、彼女は笑いながら続ける。
「アタシとアンタは世界に2人。アタシもアンタが大好きよ、フェリーぺ。大好きで大好きで溜まらないの、」
その続きを聞きたくなくて、俺は必死に腕を伸ばして彼女を止めようとするけど声がでない。変わりにヒューヒューと頼りない音が喉から漏れていた。
「だけど、だけどね。アンタの愛は大きすぎるわ、食べきれないのよ、アンタってば子供だから仕方ないって付き合っていたけど、もう限界だわ。」
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