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右手にはさっき摘んだ三つ葉のクローバー
左手はズボンのポケットに収まっている
クローバーを摘む時にしゃがんだ体勢のまま、クローバーを見つめるでもなくただボケッとしてた。
上見たら 空が晴れて綺麗だ
小さく、溜め息ともつかない息を吐いてそろそろ立ち上がろうと足に力を入れる。
だがその行動はあまり意味を成さなかったようだ。
「相変わらず軽いね」
にこにこした大倉が言う。
正面から俺の脇の下に手を入れて軽々と立ち上がらせた彼はなんだか楽しそうで、だけどそんな気分でもない自分はおもしろくない表情をしているんだろう。
「……」
ん、と右手を差し出した。
そこにはさっきと何ら変わらない三つ葉のクローバー。
それを見てちょっと不思議そうな大倉。
とりあえずと、俺の右手からクローバーを受け取った。
「どうしたん?クローバーなんて。しかもただの三つ葉…」
意味なんか、ないに決まってるやん。
ただ目の前あったから
ただそんな時にお前が来たから
それくらい分かれ
じっと、大倉を見つめた。
考えてること伝わったらいいのに。
そんなことしてたらまたにこにこな大倉になった。
意味わからん、けど、分かったよ。ってクローバーを見つめながら言われた。
大倉くんにしては上出来やないですか。
ポケットに仕舞ってた左手を出して、少し背伸びしながら頭をぽんぽん。
もちろんその一連の動作の中に自分は一言も発していない。
会話なんて、あまり必要ないのかも
他の人のことは分からないけど
少なくとも、俺とお前はこの時間会話は無くともやっていけてるし。
うん、とひとりでに頷いた。
「すばるくん、そろそろ貴方のお声が聞きたいのですが?」
笑って大倉が言ってきた。
やっぱり、会話は必要?
「ぼんくらぁ~」
「ちょ、なんでぇ?」
小さく咲いてた
もしかしたら気づかないほどのもの
けど、ちゃんと分かってるよ
君がいること
なんでもないけど、大切なんや。
end.
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