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いつもなら、ドアから担任が現れて、朝のHRが始まろうという時間──
教室内はパニックに陥っていた。
うちのクラスは
男子22人 女子20人
計42人。
そのうちの半数ぐらいが、すでに、カッターやハサミなどを手に立ち上がっていた。
ぷぷ……文房具かよ。
楽勝だな。
残りの者は、必死に机の中をあさり、武器になりそうな物を探している。
しかし、武器を構えてはいるが、まだ誰も自分の席から離れようとはしなかった。
それもそうだろう。
昨日までクラスメイトだった者を「殺せ」と言われて「はい、わかりました」とすぐに殺せるわけがない。
僕は親からなんとなく聞いていたが、他の奴等は、さっき初めて聞いたんだ。
それに、こんな荒唐無稽な状況を、あんな放送一本で本気で信じろというのが無理だ。
もし、これが教師による何かの冗談なら、行動を起こしてからでは取り返しがつかない。
だから、誰も動こうとしない。
だけど。
うちは両親ともに、国会議員。
昨夜、いつもなら僕なんかに構ったりしない父親が僕を呼びつけ、ナイフを持たせた事を考えれば……
さっきの放送は、おそらく、本物だ。
「ねぇ、みんな、落ち着こう?」
そんな中、冷静な声を上げた女子がいた。
学級委員長の花澤絵美だ。
「殺し合いなんて、する必要ないよ。何もせず、ここにいればいいの。40人以上の生徒が夜になっても家に帰らなければ、誰かの親が警察に連絡するわ」
皆が、花澤の言葉に聞きいっていた。
なるほど。確かに、僕たちには殺し合う理由も必要性もない。
さらに、殺し合わなかったとしても、何のデメリットもないのだ。
皆が安堵の表情を浮かべ、手にしていた武器を机に置いた。
その時。
「う、うわぁ!!」
「きゃぁー!!」
教室の一角で悲鳴が上がった。
皆の視線の先には、机に顔を突っ伏している男子。
えーと……あの席は大野か。
自己中で、協調性がなく、クラスのガンみたいな奴。
でも、体が大きくて不良グループにも入ってるから、誰も大野に逆らえないんだ。
いや、そんなことより。
僕の席からは、遠くて良く見えないが……
大野の背中から、何かが生えている……?
違う。
あれは、突き刺さってるんだ。
僕の持ってるバタフライナイフより、はるかにゴツい
サバイバルナイフが──
皆が騒然とする中、大野の背中からそのナイフをゆっくりと引き抜いたのは……
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