キスについて 1

2/4
前へ
/64ページ
次へ
好きなところ。 いつだったか聞かれて、まず初めに思いついたのは指。 長くて。 節が目立たなくて、細いんだ。 男のクセにって可笑しかったけど、最近はちょっと考え方が変わった。 「ちょっと…?」 「ん~?」 人差し指長いなぁ。 中指も。 「あのさ、ちょっとの間でいいから離してくれませんか?」 「………」 顎を乗せたテーブルの上には、開いたパソコンと雑誌と新聞とノートと…。 とにかく色んなもんが拡げられてる。 「ねえ」 「そのさ、紙とか捲ったりすんじゃん?」 え、の形で口が開いたまんま俺を見下ろす。 かっこいいのに、なんか残念。 「そのぺらぺらすんのがさ」 「え~…と、あなた眠いの?」 ふ、と笑顔になって。 俺の手に掴まれたままの指と反対の手が俺の頭に乗っかった。 「眠くねーけど?」 「そう?」 昨日ちょっと無理させた、なんて少しは反省してんのか? 「ニュースん時、指かっこいい」 「え!? ニュース?」 わかんねーかな。 誉めてんだけど。 「俺やっぱ、好き(手が)」 「ありがとう」 照れてれの顔のクセに、礼を言う顔は真面目で、謙虚で、優しくて。 「自慢」 「そう?……ええ!?」 キスをひとつ。 その手の甲に軽く唇を押しあてた。 .
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

389人が本棚に入れています
本棚に追加