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独り暮らしが寂しい。
この頃会う度にこいつはそう言う。
いつもの顔(ちょっと困り顔)。
いつもの声(高音掠れぎみ)。
そんで、時々俺をじっと見る。
言いたい事、…あるんだろうなあ。
「今日はどうすんの?」
明日オフでしょ?
さっきキスした手は、今俺の頬っぺたの下にある。
手のひらが上を向いてるから、時折親指が頬を撫でてる。
「明日、呑みに誘われてる」
仲のいい元共演者の名前を一人、二人と挙げていくうち、なんだか申し訳ない気持ちになって頭を起こした。
「ん?」
どしたの?
書類だか台本だかを見ていたらしい顔の、眼だけが俺の方に移って。
「いや、俺だけ休みだなあ…って」
「うん?」
だから?
首を傾げる様子にホッとしたりして。
忙しいよなあ。
あれもこれもだし。
「その前に、どうせ行くんでしょう?」
「バレた?」
「分かるって」
最近はあんまり煩く言わなくなったから助かる。
いい感じ。
恋人、より、友達みたいな距離感が気持ちいい。
「んじゃ、今日は帰りまーす」
わざと抱きついて、キス。
「おわっ」
「お返しだっ」
最近丸くなった頬っぺたに、思い切り唇を押し当てた。
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