恋する乙女に罪はなし

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自分は何をしてるんだろう。 なんとも言えないモヤモヤした気持ち。 白黒つけようにもなんなのか分からない以上、白黒つけようがない。 胸の中に何かが詰まっている感じ。 不快なはずなのに何故か嫌とも言い切れない不思議な感覚。 こんなことはこの職についてから……いや、生まれて今までも味わったことがない。 「ふぅ……」 今日、何度目かのため息。どんどん間が短くなってきている気がする。 「…………」 悔悟棒を持っている手とは逆の手に握られている浄玻璃の鏡を見る。 今、自分はどんな顔をしているのだろうか。 そんなことを考えながら手鏡の形をしているそれを自分に向ける。 罪人を映し出すとその者の過去を映し出す鏡。 それに姿が映った瞬間、そこには映ったものは、 「えっ?」 目の前にある筈の自分の顔とは違った。 『はっ……あぅ……』 そこに映し出されたのは、 『……うっ……』 彼のことを想うと身体の奥から込み上がってくる熱に耐えられず、 『……んッ! はっ、かっ……』 喘いでいる自分の姿。 「あぅぅぅぅぅ……」 耐えかねて鏡を伏せる。 鏡を見ないでも分かる、今の自分の顔は焼けた鉄のように真っ赤だ。 罪人の過去を映し出す鏡に映し出された自分の過去。 それはつまり自分が罪を犯したということ。
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