恋する乙女に罪はなし

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「暇だねぇ……」 三途の川で仕事中にも関わらず 堂々と暇と言い切る死神・小野塚小町は欠伸を噛み殺しながら、数日前までのことを思い出していた。 「アイツがいなくなって話相手もいなくなっちまったし……」 数日前までは映姫の手伝いをしながら小町の話し相手もしていた男。 男がいる時は暇もキチンと潰してくれたのだが、いなくなってしまったので潰す暇もない。 ちなみにさっきも言いましたが仕事中です。大事なことなのでニ回言いました。 「あ~あ……暇だねぇ……」 しつこいようですが仕事中です。 「……追いかけていっちゃおうかな~。恋は盲目だって言うし……」 「何がなんですって?」 「きゃん?!」 完全に油断していた小町は可愛らしい悲鳴をあげて後ろを振り向く。 するとそこには自らの上司である四季映姫がいた。 「四季様!? えっと、別にサボって訳じゃ……」 「言い訳は聞きたくありません」 「……すいません」 「言葉だけの謝罪は聞きあきました。……まぁ、いいです」 その映姫の言葉に小町は隠すことなく驚く。 いつもならここから不機嫌オーラを出して説教開始な筈なのに、何故か今日は説教開始の雰囲気がない。 それに映姫から出ているオーラは不機嫌というよりは機嫌がいいような柔らかいオーラだ。 驚いている小町を無視して映姫は歩き出す。 「って、四季様? 一体どこに行くんです?」 「少し出かけてきます。留守の間のことは頼みました」 質問に簡潔に答えると映姫はどんどん歩いてく。 「出かけるって……何しに?」 その小町の言葉に映姫は足を止める。 そしてほんの少し困ったような顔をした後に振りかえり、 「白黒つけに行くだけです」 少しだけ恥ずかしそうにそう答えた。 「……私もついて行っていいですか?」 「留守を頼むと言ったばかりですが?」 納得できない小町はぶーぶー文句を言うが、一度決めた決定を映姫が曲げる筈がなかった。 映姫が去った後の部屋。 そこにあるいつも映姫が座っている椅子には浄玻璃の鏡と悔悟の棒が置かれている。 悔悟の棒には一文字大きく『嘘』と書かれていた。
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