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魔法の森。
入ればただの人間は間違いなく迷うその中にこじんまりとした家がある。
その家が小さいのか、周りが広すぎて小さく感じるのか分からないが、とにかく廃墟ではなく、間違いなく人が住んでいる民家があった。
その家の中の居間に位置する部屋の中央、そこある椅子に腰かけながら家のその持ち主であるアリス・マーガトロイドは優雅に紅茶を飲んでいる。
ティーカップを持ち、紅茶を音もなく飲むその姿は優雅で一枚の絵画のよう。
近くにある小さな机、机の上のティーポット、そして赤いリボンを付けた人形がその美しさに磨きをかける。
それをぶち壊すのは少し離れた位置にあるタンスの上を掃除している一人の男。
アリスの家の住人ではなく、居候させて貰っている身の男は、なんか休んでいると落ち着かないので対して汚くない部屋の中を荒探しで汚れを見つけて掃除していた。
「掃除がしやすい?」
アリスは男の呟きに眉を潜める。
別に男はアリスに対して言った訳ではないのだが聞こえてしまったのだから仕方ない。
「それはこの家が狭いっていってるのかしら? そういう訳じゃない? 屋敷が突然大きくなったり、悪魔が邪魔しに来ることもないから?」
アリスは少し意地悪してやるつもりだったのだが、切実に目じりに涙を浮かべながらの言葉に、
「……そう」
そう言うしかなかった。
「何? ……そう言われると悪い気はしないけど、流石に困るわ」
男は笑いながら自らの言葉を笑いながら否定した。
「ちゃんと回復したら出て行く……まぁ、それなら、いいわ」
アリスは喋る為に中断していた紅茶を再び飲む。
やはりそれは絵のように完成された美しさ。
「えっ?」
その美しさが僅かに乱れた。
それは誰にも、そして本人すら気付かなかった位の小さな乱れ。
「ヒモは……家事なんてしないと思うわ。………………それと」
アリスは手に持っていたティーカップを机の上に置く。
「ここは夫婦みたいって言うのが女性に対しての礼儀じゃない?」
せっせと掃除している男が固まった。
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