三題噺「石油」「お茶」「足跡」

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それとなくその場を去ることにする。 ベンチから立ち上がると、すでに目の前に子供は来ていた。 「おじさん」 人の考えの汚さも全く見てない目。汚れの無い目。 見ないでくれよ。 汚いだろ?臭いだろ? こんな大人なんて嫌だろ? 「おじさん何してるの?」 「おじさんは…何もしてないさ」 ふーんと子供は言葉にする。 はぁ…とため息をついてから子供のわきを通って公園から出る。 タタスタスタタタスタタタ …?音が多い。後ろを向くと、子供がいた。 「ほら、知らない人について来ちゃ駄目だ」 「おじさんについて来たんじゃないもん。足跡で遊んでただけだもん」 足元を見れば、歩いてきた足跡が続いていた。 子供はその汚れた足跡に小さな足を合わせて辿って来る。 そうか…。 俺はしゃがんで子供に言った。 「俺はこれからしなきゃいけないことを思い出したんだ」 持っていたお茶を足跡にかけた。足跡は掻き消えて、地面に僅かに茶色の水が張る。 「足跡も消えた。もうついて来るんじゃないぞ」 子供は悲しそうな顔をして俺を見つめた。 背を向けて歩き出す。 別に用なんてなかった。 だけどこんな俺のような大人でも、その後を子供は追って来ちまうものなんだな。 雲の切れ間から現れた太陽に向かって、俺はただ歩みを進めて行った。 -END-
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