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それとなくその場を去ることにする。
ベンチから立ち上がると、すでに目の前に子供は来ていた。
「おじさん」
人の考えの汚さも全く見てない目。汚れの無い目。
見ないでくれよ。
汚いだろ?臭いだろ?
こんな大人なんて嫌だろ?
「おじさん何してるの?」
「おじさんは…何もしてないさ」
ふーんと子供は言葉にする。
はぁ…とため息をついてから子供のわきを通って公園から出る。
タタスタスタタタスタタタ
…?音が多い。後ろを向くと、子供がいた。
「ほら、知らない人について来ちゃ駄目だ」
「おじさんについて来たんじゃないもん。足跡で遊んでただけだもん」
足元を見れば、歩いてきた足跡が続いていた。
子供はその汚れた足跡に小さな足を合わせて辿って来る。
そうか…。
俺はしゃがんで子供に言った。
「俺はこれからしなきゃいけないことを思い出したんだ」
持っていたお茶を足跡にかけた。足跡は掻き消えて、地面に僅かに茶色の水が張る。
「足跡も消えた。もうついて来るんじゃないぞ」
子供は悲しそうな顔をして俺を見つめた。
背を向けて歩き出す。
別に用なんてなかった。
だけどこんな俺のような大人でも、その後を子供は追って来ちまうものなんだな。
雲の切れ間から現れた太陽に向かって、俺はただ歩みを進めて行った。
-END-
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