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それぞれの思い
あたしは何でこんなことしてんだろう。
ああ…。早く帰りたい。
早く帰らせて。
「美愛ちゃん。お疲れ。もう上がっていいよ」
「あ、はーい♪じゃあお先失礼しまーす。雄大、行くよ」
あたしは鼻を伸ばしてる雄大を引っ張り出し外に連れ出す。
「いてえって」
「誰のせいだと思ってんの?」
「俺です…」
「わかってんじゃん」
しょぼくれてる雄大が少しだけ雨に打たれる子犬に見えた。
「これ…提案なんだけど。俺と付き合って俺だけのメイドなって?」
「は?それを早く言えよ」
そっちのほうが効率いいわ。
ちょっと抵抗あるけど。
まあ、いいか。
「明日からよろしくお願いします。俺だけのメイド様」
「こちらこそよろしくお願いします。ご主人様」
こいつといると調子狂う。
自分が自分じゃなくなるみたいで。
でも雄大が喜ぶなら…。
あたしはいいかなって。
それもそれで悪くないかなって。
「もう。ほら行くよ」
あたしは雄大の手を取って木実寮へ向かった。
「美愛。今日はありがとう。楽しかった。明日もよろしく」
「ったく…調子いいんだから。わかった。じゃあ明日ね」
そう言ってあたしは雄大と別れた。
何だかんだで雄大のメイドになってしまったわけで…。
空には必死で輝いている星たちがあたしたちを見下ろしている。
この星がなんだかあたしと雄大みたいで不思議な感覚。
近くの自販機で麦茶を買ってベンチに座り星を眺めていた。
そしたら瞼が重たくなって。
あたしはそのまま眠りについた。
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