それぞれの思い

1/4
前へ
/18ページ
次へ

それぞれの思い

あたしは何でこんなことしてんだろう。 ああ…。早く帰りたい。 早く帰らせて。 「美愛ちゃん。お疲れ。もう上がっていいよ」 「あ、はーい♪じゃあお先失礼しまーす。雄大、行くよ」 あたしは鼻を伸ばしてる雄大を引っ張り出し外に連れ出す。 「いてえって」 「誰のせいだと思ってんの?」 「俺です…」 「わかってんじゃん」 しょぼくれてる雄大が少しだけ雨に打たれる子犬に見えた。 「これ…提案なんだけど。俺と付き合って俺だけのメイドなって?」 「は?それを早く言えよ」 そっちのほうが効率いいわ。 ちょっと抵抗あるけど。 まあ、いいか。 「明日からよろしくお願いします。俺だけのメイド様」 「こちらこそよろしくお願いします。ご主人様」 こいつといると調子狂う。 自分が自分じゃなくなるみたいで。 でも雄大が喜ぶなら…。 あたしはいいかなって。 それもそれで悪くないかなって。 「もう。ほら行くよ」 あたしは雄大の手を取って木実寮へ向かった。 「美愛。今日はありがとう。楽しかった。明日もよろしく」 「ったく…調子いいんだから。わかった。じゃあ明日ね」 そう言ってあたしは雄大と別れた。 何だかんだで雄大のメイドになってしまったわけで…。 空には必死で輝いている星たちがあたしたちを見下ろしている。 この星がなんだかあたしと雄大みたいで不思議な感覚。 近くの自販機で麦茶を買ってベンチに座り星を眺めていた。 そしたら瞼が重たくなって。 あたしはそのまま眠りについた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加