それぞれの思い

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『ほら、泣くなって』そう言ってあたしの涙を優しく拭ってくれた。 その優しさにまた涙が出てきて。 あたしは雄大をギュッと抱きしめた。 「どうした?」 「なんでもない…」 あんたの温もりはあたしを安心させるんだよ。 だからギュッてしてあんたがいるんだよってことを確かめたくて。 そしたら雄大がよしよししてくれた。 「大丈夫だから」 「うん…」 雄大は優しいね。 ホント出会えてよかったよ。 あたしだって色んな悩み抱えてた。 でもみんながいてくれたから今のあたしがいる。 「ごめんね。こんな時間になっちゃって」 「いいよ全然。そんなことよりもう泣き止んだのか?」 「うん。もう遅いから泊まってく?」 あたしは今、無性に雄大と一緒にいたかった。 いなくなっちゃうんじゃないかって。 もう帰って来ないんじゃないかって。 だから今日は一緒にいたい。 そう思ったんだ。 「いいのか…?」 「今日のお礼もしたいし」 雄大の部屋はあたしの寮の隣に位置している。 あたしと雄大が住むこの寮は男子と女子に別れている。 あたしたち女子の寮が海側。 雄大たち男子の寮が山側。 ホントなら女子の寮に男子は入っちゃいけない規則なの。 でも今回は特別。 「笠原さんに見つかったら雷落ちるぞ」 「へーき。へーき。バレなきゃこっちのもんよ」 そう言ってあたしは雄大を部屋の中へ促した。 慣れない環境の中であたしたちは横になった。 何か変な緊張が…。 高鳴る鼓動を抑えながら必死で瞳を閉じる。 しかしなかなか寝付くことができない。 何度も寝返りしながらあたしは朝を迎えてしまった。
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