家族の思い出

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それからのあたしの人生は大きく変わった。 家に帰っても誰もいない。 笑ってくれる人もいなければお小遣をくれる人もいない。 兄はそんなあたしに声をかけてくれたけど元気になることはなかった。 学校でもそうだった。 みんなの笑い声を聞いてると無性に泣きたくなった。 母の笑顔と父の笑顔と兄の笑顔とあたしの笑顔。 4つの笑顔でこの神崎家は作られてきた。 でももう2つの笑顔を失った。 そしてあたしの笑顔も兄の笑顔もなくなった。 友達に声をかけられても笑えない。 親友でさえも笑顔を作ることができない。 高校2年になった夏。 あたしは夏休みと同時に兄と寮に入ることになった。 最初は納得いかなかったけど兄の説得で入ることを決めた。 そこであたしは三浦舞と出会った。 舞も両親を何年か前に亡くしたって言っていた。 この寮にはあたしと舞のような両親がいない人がたくさんいる。 どうせここでも前の生活と変わらないだろうと思っていた。 でもある日、夢の中に母と父の姿を見た。 ふたりはあたしに向かってこう言った。 『私がいなくてもあなたは寮の人たちと仲良くなさい。決して私たちのことを引きずったりはしちゃダメよ。あなたは笑顔で生きていくの。でも。これだけは忘れないで。私たちはずっと美愛と英介のことを見守っているってことを』 『美愛。寮生活は大変なことが沢山あるかもしれん。でもなそれを嫌々こなせばお前はいつまでたっても成長しない。だからずっと笑顔でいろ。たとえ大変な仕事でもな』 そして父と母は笑顔であたしの前から消えた。 お母さん…今まであたしを育ててくれてありがとう。 お父さん…今まで笑顔でいてくれてありがとう。 ずーっとあたしはお母さんとお父さんの娘だからね。 大好きだよ。 そう天国の母と父に言ってあたしは涙を流した。
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