孤独を知らなかった猫

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  ある晴れた日の事、 僕は秋田の大きな日本家屋の家に生まれた。   僕は茶色い毛が特徴のなんの変哲もない三毛猫、 名前は『ナガグツ』 理由は主人の長靴の中がお気に入りの場所だったことから主人が付けてくれた名前。     いつも、 何処からか猫が柵を飛び越えてやってくる。   僕は家を囲う柵から出たことが無い、 此処に来る猫は僕を見て、 変り者と言う。 飼い主も僕の事を 変わった猫だ、 と言っていた。   僕は普通のつもりだ。 縁側で暖かい日差しを浴びて、 庭を駆け回って、 座布団の上に丸くなる、 食事の時は飼い主の用意してくれたツナやシャケを食べて、 そしてまた、 縁側で休む。     今日はあいにくの雨、 それでも猫はやってきた 雨に濡れた茶虎の猫は、 他の猫のように、 僕を笑いに来たんだろう。   「やい、ナガグツ。お前は外に出れないんだろう?」   縁側の下、 ニヤニヤとする茶虎の猫。 僕はそいつを縁側から見下して、 鼻を鳴らして言い返してやった。   「ふん、名前もない奴になんか、僕の屋敷を荒らされたくないね」   首をクイッと上げて帰れと示す。   それを見た茶虎の猫は、 小さく頷いてからこういった。   「そうかい。君はそれでいいんだね?…僕は帰るよ」   嗚呼、帰れ。 そう心で呟いて雨足の音を聞きながら縁側に眠る。
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