孤独を知らなかった猫

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  何分経ったろうだろうか、 雨足は更に強くなる。   そろそろご飯の時間、 主人はまだ帰ってこない。   雨音を聞きながら、 縁側の同じところをぐるぐる回って、 主人の帰りを待っている。   更に強くなる雨音に不安もつのる。 ただ、 それ以上にお腹が空いて、 気付けば回ることを止めていた。   ぐぅぐぅ鳴るお腹、 お腹が鳴らないように体を丸めて、 ただただ主人の帰りを待った。   やがては主人の妹が、 僕の前にやってきて、 ツナを乗せた小皿をポンと鼻先に置いた。   妹の顔は外に居たかのように濡れていて、 赤くした鼻を啜って、 僕の顎を一撫でしたあとに背を向けた。   「主人は帰ってこないのかな」 そう呟いてツナを食べる。   雨足は少し弱くなって、 奥の部屋から主人の母と妹の声が聞こえてくる。   「……事故だなんて…。嘘でしょう。ねぇ、嘘って言って」   泣いているのかガラガラの母の声が少し開いた戸から漏れ聞こえる。   「………トラックに…即死だ…って…」   その妹の言葉に、 子供のように泣く母の声、 雨音に遮られ、 聞き取れなかったが、 主人の事だ…と、悟った。 途端に食欲はなくなった。   数分して泣き声は止んで、 また、 妹が僕のもとにやってきた。   「あら、食べないの?ゆっくりで良いよ。ちょっと、みんな出かけるね。留守番よろしくね」   僕に明るく振る舞う妹に、 僕はなんだか申し訳なく思い、 顔を見れずに、 また雨足の早くなった外を向いた。 「遣らずの雨…ね」   玄関から聞こえる母の声、 とても哀しい。
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