孤独を知らなかった猫

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  誰も居なくなった屋敷は、 小さな体の僕にはとても広い。   初めての事では無いけれど、 主人の訃報を聞いてか、 母の凶変を見てか、 妹の頑張りを受けてか、 とても、 自分がちっぽけに思えた。     不意にあの茶虎を思いだす。 此処に来る猫達は、 外で何を見ているんだろう。 外には何があるんだろう。     屋敷の縁側、 体を丸めて、 色々な事を思い返した。   さっきまで降り続いていた雨は止み、 それでも空には黒い雲が浮いている。     静まり返った家の中、 雨音すらも取り上げられて、 無音の屋敷の縁側に、 小さく丸まり床を濡らす。   鼻先に置かれた、 少しだけ噛ったツナを見つめて、 何故、 此処にあるのか。 何故、 僕はこうして居るのか。   そうか、 これは、 夢なんだ。   僕は、 だらけ続けた、 悪夢を見てるんだ。
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